2009年12月 2日
◆現代時評:「円高でなくてドル安」 Ken
◆◆アサヒコム 2009.11.26 26日の東京外国為替市場で、円相場が95年7月以来14年ぶりの円高水準になる1ドル=86円台まで急伸した。前日の海外市場でドルが全面安になった流れを受けて円が買われ、投資家がドルの見切り売りをする動きも重なった。午後2時現在は前日午後5時時点と比べ2円00銭円高ドル安の1ドル=86円35~39銭。
◆◆日経ネット 2009.11.27 27日早朝、円相場は前日の東京市場でつけた高値の86円29銭を割り込むと、損失確定のドル売りを巻き込みながら一気に84円台まで上昇。1995年7月上旬以来の高値を付けた。低金利のドルを売って外国通貨や金などを買う「ドルキャリー取引」が勢いを増している。
■■リーマン・ショック以来、今か今かと言われたドル安・円高がようやくやってきた。とうぜん来るべきものが来たといえばそれ迄で、今更どうと言うことも無いが、問題は、日本政府がそのときの用意を今までなおざりにしてきた、という不思議な事実である。
■■いま日本の財務省はドル建て米国債を7100億ドル保有している。 ということは、米ドルの対円相場が1円下れば、日本の資産はそのつど7100億円づつ目減りしていることになる。 鳩山内閣と民主党が「行政刷新会議における事業仕分け」で何とかしてカネを生み出そうと努力しているが、それにしてはこの米ドル1円下落でそのたびに日本
政府が7100億円づつ損という焦眉の急を問題にせず、放置したままという理由が今一つ理解しかねる。
■■察するに、これについての財務省の怠慢の原因は、一にかかって過去10年か15年の間に政府が米国財務省証券を保有したことによる帳簿上の運用益が膨大であったことで免罪符を得たつもりでいるのではないだろうか。 ならば、それは理解できる。 今になって考えると、わが政府の、米財務省証券をそのまま米国に預託しっぱなしという行為は、元本確保のための帳簿上有利な投資方法であったと言えなくもない。
■■じじつ、平成21年11月9日付け財務省発表によれば昨年度一年間の「外貨証券資産の運用収入」は3兆6千億円に達していて、その平均利回りは3.69%になっている。 「過去にこれだけ稼いだのだから、いまその反動でドルが少々下落しても、通算して赦されるべき」というのが財務省の言い訳ではないか、と思ったりもする。 過去平均利回り4.5%を複利計算すると、元利合わせてノミナル簿価で2倍になっていた可能性もある。(米国財務省証券の金利は今こそ3%を割っているが、過去には4.5%から5%に達していたこともある。) 米国は政策として、つねに米ドルの減価を上回る米財務証券金利を付けていたのである。
■■つまり、少々米ドル為替が値下がりしてもその分は米国からの支払い金利で補給される仕組みになっていた。 中国や英国がドルを溜め込んだのも、そうした金利を狙ってのことだったと噂されている。 こうした米国国債保有癖は必ずしもわが財務省だけのものではなく、したがって、国民からわが財務省への非難はあたらない。
■■例によってここ数日わがマスコミは、米ドルが86円台に下落したとして、いまにも日本経済がダメになってしまいそうに大騒ぎしている。 曰く、「ドルが1円下がるたびにトヨタは300億円、ホンダは120億円、ソニーは10億円の損失になる」と。 個々の民間企業が円高ドル安で輸出に損失が出たとしても、それはそれぞれの企業内才覚で然るべく操作するのが彼らのとうぜんのファンクションであり、それをマスコミがさも心配げに報ずるのは「下司の勘ぐり、対岸の火事見物」以外の何ものでもない。
■■ボクは後期高齢者で、何かにつけて古い記憶を想起する。 そのボクの記憶によれば、15年前、たしか瞬間的ではあるが米ドルが対円相場で80円を切ったことがあった。 たしか79円50銭までは下落した。 その記憶はボクにとっていまなお鮮明である。 なぜならボクはそれで、戦後数十年続けてきた貿易商売に見切りをつけ、廃業したのであった。 もっとも、そのときぐうぜん世間でいう定年の年齢に達していたことも廃業の一つの理由であった。
■■しかしいま思い出しても、そのときの円高で日本経済が壊滅するほどのダメッジがあったとは考えられない。 大方の他の同業者たちは1ドル80円が続いたままであったとしても事業を継続したであろうし、日本経済は大過なかったハズである。 つまり日本の平均的産業は、マスコミが喧伝するほどドル安に対してひ弱ではなかった、と僕は解釈している。 あの時、あのまま1ドル80円が継続していても、日本の産業はじゅうぶんやっていけ、騒いだのはマスコミだけだったのだ。
■■今回も、さっそく日本経団連会長の何某が政府に対して、「緊急対策を要求せざるを得ない」と市場介入を含めた検討を求めている。が、鳩山政府はそうした財界の無責任、無定見な要求に惑わされる必要はさらさらない、とボクは思う。「経済界はいままで90ー95円=ドルを想定して輸出の計画を立てていた」というが、そうした想定ドル・レートは、じっさいはいい加減な予想見積もりに過ぎず、情勢が変わればそれに対応した新レートにすぐ切り替えるのが民間企業の能力の見せ場であることは言うまでもなく、そのつど政府に何かを頼むのは邪道である。
■■こういったときこそ産業界自身で適当に処置し、政府が市中の外国為替操作に介入すべきでないことはとうぜんである。 妙なところで政府がケインズ流を持ち出すべきではない。とくに今回の場合、ドル安の原因の一つにドバイのイスラム資本家たちによる無責任な資金繰り失敗があったと言われており、その尻拭いに日本政府が加担すべきではない。
■■ボクの古い商売相手に、さるイスラム資本家が居た。 彼らは機会利益を追うマーチャントであることを誇りにし、産業資本家としての矜持など片鱗も持ち合わせていなかった。 そのイスラム商人たちが不遜にも砂上の楼閣を建てようとし蹉跌したのに、わが国経済が片棒担いで援助する必要などさらさら無いのだ。
■■それよりわが政府は、政府自身が保有する7000億ドルの米国財務省証券を、このドル安に遭遇し、どう有利に立ち回るかを早急かつ真剣に考える必要がある。 なぜなら米政府財務省証券の利回りがここのところ3%を割り、それがドル安、ドル・キャリーと金融業界が蠢動している現状につき、わが政府も、米国に預託したまま金利稼ぎするより、もっと安全有利な米ドル運用方法を考究する時期が到来したとさとるべきである。 更なる米ドル相場の下落見込みと、米国政府からもらえるであろう米ドル金利を秤量したばあい、3%弱という金利はイーブン、つまり政府による外貨運用上の損益分離点であるからだ。
■■そのためには「米国に預託した米財務省証券の引き取りは、米国政府が簡単にはOKしないだろう」といった、いらざる風評に義理立てして「米国財務省にいつまでも預けっぱなし」にしておくべきではない。
預けたカネは必要なときに還してもらうのがとうぜんである。
■■たとい少しでも預託証券を米国から取り戻し転売するか、あるいは中国を真似て発展途上国へ余裕ドルとして貸付けするか、いまはそうした思案のときである。 霞ヶ関に埋もれた金塊を探し出すのも才覚、不急の政府事業を中止して予算を没収するのも才覚である。 がそれ以外にも、政治家や官僚たちは、政府保有の眠りドルの有効利用に才覚を働かせる必要が大いにあるハズである。
■■いまごろ米ドルを懐にして海外旅行をすればすぐ解る、世界中どこのホテルでもその滞在費の高いこと。 少なくとも10年前のホテル代の2倍になっている。 つまりそれだけ米ドル価値がここ10年で目減りしているのである。 そしてその米ドルにスライドして日本円も不思議に下落さされていた。 それがいま目を覚まし、日本円の米ドルから
の独立性が回復したのだ。 そして日本円の値上がり見直し、ボクらはそれを喜ばねばならない。
■■わが国からの輸出が赤字になるなどと称して、経団連のバカ指導者たちが円高に不服を言うのは無視するに限る。 それで輸出力が無くなる商品はもはや国際競争で負けた商品なのだから退場するしかない。
デフレと円高に相関関係は無い。円が値上がりすれば円による国内物価が値下がりするのはとうぜんのことである。 円がドル離れし、国際社会で正当に再評価され始めたのだから、日本国民はそれをきわめて目出度いこととして祝杯を挙げるべきで、デフレなどといって悲観するのは誤りである。
2009年12月 2日 10:57
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