'."\n" ?> 片山通夫の「取材手帖」:コラム風「め・ざ・せ!ピューリッツァー賞」:片山通夫
片山通夫の「取材手帖」

2010年4月24日

コラム風「め・ざ・せ!ピューリッツァー賞」:片山通夫

 報道の一つのスタイルに「調査報道」というものがある。先日、ピューリッツァー賞を米国の非営利オンラインニュースサイトProPublicaのシェリ・フィンク記者がネットメディアで初めて受賞した。

  世界金融危機以来、アメリカでも我が国でもマスコミの人員整理が進み、それと同時に夕刊の廃止(日本)や、ウェブサイトへの移行も顕著だ。原因は広告収入の減少と新聞などの売れ行きの減少がある。それら財政的に苦戦するマスコミが時間と費用のかかる「調査報道」への取り組みも経済的な理由から打ち落ち込んでいるのではないかと思われる。

 その「調査報道(Investigative journalism)」の意味を調べてみる。
「あるテーマ、事件に対し、警察・検察や行政官庁、企業側からの情報、すなわち記者クラブ、リーク、広報、プレスリリースなどからだけの情報に頼らず、取材する側が主体性と継続性を持って証拠を積み上げていくことによって真相を突き止めていこうとするタイプの報道。もっとも代表的なのが『ワシントン・ポスト』によるウォーターゲート事件報道」を言う。
また我が国で特筆すべき調査報道は次の通りとなっている。
1.『文藝春秋』における立花隆の「田中角栄研究-その金脈と人脈」
2.朝日新聞横浜・川崎両支局によるリクルート事件
3.新潮社『フォーカス』とANN系『ザ・スクープ』における桶川ストーカー殺人事件
4.『ザ・スクープ』における北海道警裏金事件
5.TBS系『スペースJ』における下村健一の松本サリン事件冤罪事件・報道被害事件
となっている。(以上ウキペディア)

 昨年12月に早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコースの主催で開かれた「ジャーナリズムの新しいかたち~非営利化するメディアと調査報道の可能性」というシンポジウムで、「米国では非営利のジャーナリズム組織が誕生し、調査報道の主役を担い始めている実態」が紹介された。

 ここで注目すべきは「調査報道」が大手マスコミの守備範囲から、非営利のジャーナリズム組織に移行しようとしている現象である。世界不況による広告収入の落ち込みが、新聞の発行はもとよりテレビの番組制作にも大きなダメージを与えている中で「非営利組織のジャーナリズム」が大手マスコミの穴を埋め出したと言われている。アメリカでは多くの調査報道NPOはニューヨーク・タイムズやCNNテレビなど国際的に有名なマスコミと提携し、質の高いコンテンツを提供しだした。

 今後、この傾向は今後我が国でも強まる可能性は否定できない。大手マスコミが二の足を踏むであろう「調査報道」というジャンルは「非営利ジャーナリズム組織」の生きる道になりそうだ。従来、我が国のマスコミ大手は、デパートよろしく「すべてを自社で」賄うのが当たり前として来た。しかし発行部数の落ち込みと広告収入の減少はその「当たり前が当り前でなくなってきた」可能性がある。また、Webというツールは国境をいとも簡単に進む。「非営利ジャーナリズム組織」は、我が国のマスコミだけをターゲットにする必要はない。

 一方、我が国で著名だったWeb新聞が相次いで休刊もしくは廃刊に追い込まれたことは記憶に新しい。これらのWeb新聞は「大手マスコミの模倣」だったのではないか。「今日、今ここで起こっている事件」を論評なしで速報しても、アクセス数(=発行部数)は決して上がらない。じっくりと腰を据えて「ニュースを掘り起こし、その背景を調査=取材して伝える」という姿勢がWeb新聞には少なかったように思える。市民記者の質の問題だけのせいではない。

 今一度「主体性と継続性を持って証拠を積み上げていく調査報道」というジャンルを検証してみる必要がある。

 無論、わがジャーナリスト・ネットも然りである。ピューリッツァー賞をめ・ざ・せ!。

2010年4月24日 09:31

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