'."\n" ?> 三室勇の「不定期刊ZUBORA」:日曜新聞書評欄簡単レビュー:三室 勇
三室勇の「不定期刊ZUBORA」

2010年10月31日

日曜新聞書評欄簡単レビュー:三室 勇

日曜日恒例の新聞書評欄紹介。朝毎読日経産経地方紙の6紙の中から。

昨日、大阪市の弁天町市民学習センターで行われた「ヨーロッパ少数民族の差別・迫害との闘いを知る。ルードウィク・ラーハさん(オーストリア)『スィンティ女性三代記』講演会」では、この夏、フランスのサルコジ政権が行った非定住少数民族ロマの人々に対する差別的で違法な国外送還が1つの話題になった。日本では全く知られていないロマ、スィンティといった少数民族に対する差別・迫害が、自由と平等を掲げて闘いとったっとはずのヨーロッパ近代市民社会のただなかで横行していることの意味を考えなければならない。ふりかえれば、ナチの台頭を許したものも同じ根をもつものだ。「自由と平等」は権益のようにして多数者によって独占されるということなのだ。経済恐慌などで社会的不安が醸成されると、多数者の不安感情は少数者への排外的感情へと転化する。日本にもその兆しがみえてきていないか。

 

毎日――

田中伸尚『大逆事件――死と生の群像』(岩波書店、2835円)、評者・田中優子。評者は、国家が外に向かって拡大していくとき、必ず内に向かって強い力で弾圧する、この構図は近代国家の宿命だという。100年前に起こった大逆事件もその構図にぴたりと当てはまるということなのだろう。本書を読んで3つのことがわかってきたと評者は言う。1つは国家にとって不都合な人たちを、なにもつながりがなくバラバラに、それぞれが生きているにもかかわらず、任意の団体のようにして一網打尽にして死刑にしてしまう。2つめは、証拠捏造が行われる。これは昔も今も日本の検察の得意芸でもあるから、なおさらこわい。3つめは、「逆徒」というレッテルが貼られることだ。それによって人々の口ふさぎをし、タブー化する。その不当性を再調査をしたくても、それを語りたがらない風潮をつくる。もう1つ評者は重要な指摘をしている。マスメディアの自己規制である。当時からマスメディアは真実などより、権力のイヌ化しているわけである。

 

小林秀明『クーデターとタイ政治』(ゆまに書房、1890円)、柴田直治『バンコク燃ゆ』(めこん、2625円)、評者・白石隆。タイはここ数年、赤シャツ(元首相タクシン派)と黄色シャツ(反タクシン派)のデモや座り込みが報じられ、この動きがなにを物語るのか知りたいと思っていた。前著は駐在大使の書いたもの、後者はタイに詳しい朝日新聞の特派員が書いたものである。混乱の背景に「偉大な王の御代がおわりつつある、そういう「国父を失う不安」が危機の大きな文脈を構成している」(後書)といった見方があるようだ。王室のメンバーはこの2つの勢力とそれぞれ関係をもっているようだ。タイ社会を理解する手立てになる本のようだ。

 

 

朝日――

梅棹忠夫『梅棹忠夫 語る』(日経プレミアシリーズ、893円)、評者・横尾忠則。今年亡くなった梅棹忠夫の語りおろしである。聞き手は民博名誉教授の小山修三。評者は「現在の日本人に対する遺言に聞こえる」と書いている。冒頭から日本のインテリ批判がでる。自分は知識人だと一段高くおいて、町人や民衆をバカにしている。昔のサムライと同じだとこき下ろす。他人の本を読んで、その亜流を書くことで偉そうにしている。どこにも独創性といったものがない。確かにいわれればそうかもしれない。実地に体験したことから考え、紡ぎ出す思想、これこそが彼がしてきた仕事なのだ。いうなれば学者らしからぬ学者だから、じつは本物なのかもしれない。

 

日経エンタテインメント編『日経エンタテインメント! K-POPGIRLS』(日経BP社、980円)、評者・速水健朗。韓国は1997年の通貨危機以降、戦略的文化輸出に力をいれるようになった。その1つの現れがK-POPである。BoA、東方神起がさきがけとなり、いま新たに「少女時代」「KARA」などがJ-POPをしのぐ人気を得て、日本の若者たちに受け入れられている。書評見出しに「国家戦略としてのアイドル」とあるが、これら少女グループなどは、10歳ころにスカウトし、7年とかの年月、ダンスと歌の特訓をして、POPミュージックシーンに登場してくる。そうしたやり方は日本のジャニーズ事務所などのやり方を、それなりに学んだものかもしれない。韓国のエンターテインメント業界を引っ張っているSMエンターテインメントからはこうした多くのタレントが輩出している。2009年にデビューした「f(x)」は5人組の少女グループだが、メンバー構成をみると、韓国生まれ2人、韓国系アメリカ人、台湾系アメリカ人、中国人と多国籍グループとなっており、市場を東アジアからアメリカ市場まで見越した広域に捉えていることがわかる。新しいこのK-POPの動きはyoutubeでみることができる。

 

2010年10月31日 09:24

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