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三室勇の「不定期刊ZUBORA」

2010年12月26日

2010年の"出版大賞"に値するものは何か:三室 勇

日曜新聞書評欄レビューは年末ということで休み、仮に今年の"出版大賞"というものがあるとして、それに該当するものは何かをとりあげようと思う。

 今年は「リーク」情報に揺れた年であった。世界的にはWikiLeaks、日本では海上保安庁ビデオ流出、それと「公安テロ情報」流出事件が話題になった。「公安テロ情報」に関しては発覚から2か月たって、やっと警視庁の桜沢健一警務部参事官が「警察職員が取り扱った蓋然性が高い情報が含まれる」と、渋々ながら認め、「極めて遺憾であり、申し訳なく思う」と謝罪した。

 この情報をまるまる本にした『流出「公安テロ情報」全データ』(第三書館)に"出版大賞"を贈りたいと思う。

 この本はデータ集であり、読む本ではないと思うが、明らかに「イスラム教徒=テロリスト」といった予断に満ちた決定のもとに捜査が行われ、それが具体的に記録されている。

 11月30日の東京新聞朝刊のメディア観望欄で「リークを歓迎する」というコラムではこの「公安テロ情報」を取り上げていた。少し長いが引用しておく。

 「文書は140点。この数はイスラム教の聖典コーランの章数と同じである。まずは本物なのか。文書に記された「対象者」に聞くと、事情聴取の日時、内容とも事実だと分かった。本物とみてよい。
 文書からは礼拝所を訪れたイスラム教徒を尾行し、深夜まで「任意に」事情聴取し、別件逮捕も当然という警察の無軌道ぶりがうかがえる。
 対象者家族の氏名、年齢、通勤通学先、結婚の経緯、給与などの個人情報に加え「通報者と思われたら、子どもまで殺される」と怯える「協力者」の素性まで流出されてしまった。この責任の所在は明らかにされねばならない。」

 そうした捜査の背景には偏見と予断があった。(以下引用)
「■イスラム敵視政策
 もっと深刻な意味が文書からは読み取れる。それは無知に基づく警察のイスラム圏への敵視政策だ。例えば、57カ国・8組織を擁するイスラム諸国会議機構(OIC)の出身者は、すべて監視対象として扱われている。
 テロリストを見分ける着眼点なる項目もある。「礼拝を欠かさず、宗教的行事にまめに参加する」「飲酒はせず、ハラールフード(戒律に従った食品)しか口にしない」「欧米、イスラエルの批判をする」。アラブの街角なら普通のまじめな市民の条件だ。
 米ブッシュ前政権の対テロ政策とうり2つにみえる。米国のそれはイスラム圏の怒りを増幅させ、逆に事態を悪化させた。オバマ政権はその後始末に懸命だが、外事警察はまだ誤りに気づいていない。」

 警察権力の監視が政治家やメディアの仕事だと思うが、こうした警察の行き過ぎをチェックできていたのか疑問だ。このコラムでは「実態の解明や批判に及び腰だった」言っている。検察のシナリオ捜査が問題となったのと同じように警察の人権を無視した捜査も明らかになった。そうした意味で『流出「公安テロ情報」全データ』の出版は貴重といえよう。この本はアマゾンでは扱っていない。版元ドットコムで近々第3版がでるという。

 来年あたりは「ウィキリークス解説本」がどっと出てくるのではないか。楽しみにしたい。

2010年12月26日 07:27

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