三室勇の「不定期刊ZUBORA」

2011年1月15日

コラム「風」いものちから  三室 勇

▼芋の力ではない。妹の力のことである。
古代の日本には女性には霊力が備わっているといった呪術的な信仰があった。
戦前にも兵士が出征するとき、お守りに近親者の髪を懐に忍ばせて行ったという。恋人のしもの毛を護符としてもらい満蒙開拓にでばった青年たちもいただろう。
そういえば柳田国男に『妹の力』があり、宮田登に『ヒメの民俗学』があったが、女性の力、おそるべしを感じさせてくれる本だった。

▼産経新聞朝刊に「朝の詩」という欄がある。短い投稿詩が毎日掲載されている。
今ブームとなっている"クチコミ100万部"と広告されている柴田トヨさん、99歳の詩集『くじけない』は、この欄から生まれたらしい。いまではウィキペディアにも載る知名人となった。産経新聞は彼女のインタビューをのせたり、出版されると何度も記事にしてきた。もともと自費出版の詩集だったが、飛鳥新社が目をつけて、今のブームとなった。

▼小柄なおばあさん、柴田トヨさんは、外出しない日も毎朝お化粧をするという。「化粧」という詩がある。「九十七の今も おつくりをしている/誰かに ほめられたくて」、そんな言葉に女性たちはホロッとくるのかもしれない。

▼認知症が進んだ女性たちは、髪を整え、化粧をしてあげると元気になるという。鏡をみてうきうきした気分になるらしい。こうした「化粧療法」は高齢者施設でも試みられはじめたようだ。それに反して男は、なんにもないといっていい。ただただ女の霊力にすがって生きるしかない。今の時代を変えていくのは「妹の力」だとつくづく思う。

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2010年12月11日

コラム「風」WikiLeaksは嵐の前ぶれか  三室 勇

▼9日の英国紙「ガーディアン」電子版サイトに"ロシアはジュリアン・アサンジにノーベル平和賞を提案"という記事を載せていた。これはメドベージェフ大統領がEU首脳会議に7日に出席したブリュッセルで出た話らしい。WikiLeaks122日の情報公開で、ロシアは汚職とマフィアの国と書かれ、プーチンはバットマン、メドベージェフは脇役のロビンと書かれた。7日のアサンジ逮捕の知らせを聞いて、アメリカへの当てつけで、アサンジ解放にはノーベル平和賞が必要だと言ったのかもしれない。アメリカとアサンジの関係は、ちょうど中国と民主活動家の劉暁波との関係になるだろうから。

 

▼アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、日本など政治家、官僚たちは躍起となってWikiLeaks情報を抑え込もうとしている。しかし、ネット世界ではつぎつぎとミラーサイトが生まれ1600を超えている。フランスがWikiLeaksのサーバー閉鎖の動きをみせると、フランス紙「リベラシオン」がミラーサイトを立ち上げたと宣言するというふうに。25万通のアメリカ大使館からの機密公電文書は今後も小出しに出続けるに違いない。

 

▼経済関連の記事の中にはオーバーに"WikiLeaks発世界恐慌"といった記事もみられる。アサンジ情報の中にバンク・オブ・アメリカに関する5ギガの機密情報があり、それが公開されると、金融機関が大混乱するということらしい。日経新聞web版(9日)は、米フォーブス誌(1129日)のアサンジ・インタビュー記事を全文翻訳している。ここで大使館情報はほんの一部であり、企業リーク情報が大量にあり、その手始めに米国大手銀行の告発情報を出すといった話をしている。

 

▼米フォーブス誌のインタビューの中で、これまでの銀行告発情報としてアイスランドのカウプシング銀行やスイスのプライベートバンク、ジュリアス・ベアの話がある。大企業、大富豪の信用調査内容があからさまに記述されているとか、タックスヘブンのケイマン諸島に資産隠しをしている資産家情報の曝露など、企業、資産家を震え上がらせる内容が語られている。

 

▼忘れてならないのは、WikiLeaksは内部告発者によって維持されている。創始者アサンジは、それを安全にばらまく仕事をしている。内部告発者の身に危険が及ばないことを保証しているからこそ、情報はリークされる。いうなれば、リークしたいができない人たちが多くいたということだ。海上保安庁のビデオ流出にしても、流出された当事者の個人の考え方と社会規範がズレを起こしていることはわかる。今の時代の基盤となる規範が実はダブルスタンダードになっていることを、私たちは感じている。パワーエリートは上手に使いこなし、世渡りしている。それに対する齟齬を一連の告発は語っているようにも思える。

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